東京

 冬の冷たい空気にさらされて朝のバス停でふと考える。よくここまでうっかり死んでしまうこともなく、わたしたち、ちゃんと生きてこれたな。気を張らないと死んでしまいそうな日もあったのに。

明日死んでしまうかもしれないと、生き急いだ昨日もあったし、絶望の淵に立たされてあと少し追い風が吹くだけで永遠の終わりの奈落の底に落ちてしまいそうなギリギリで生きていた一昨日もあった。

それでも今日は、朝の光が窓からさして心地いいお風呂に入ったし、コンビニでドーナツを買うか悩んで結局コーヒーを買ったし、お昼にはカレーライスが食べたいと思いながら両足でしっかり立っている。

不思議なものだと思う。車に轢かれそうになったり、小さい頃高熱をだして深夜病院に行って点滴を打ったり。

心の底から愛する人に拒絶されたり。

誰かに愛されるのは当たり前のことではないと幼いながら知ってしまった時も、誰もが私を透明人間にした日々もあった。

それでもなんでかなんとか生きている。

今日の夜はたぶんあの人との待ち合わせにしゃんとしてルージュを塗り直しておしゃれして西口の交番に向かっている。

東京で奇跡的に生き延びたんだなあと思う。